千利休の孫である、”元伯宗旦(げんぱくそうたん)”からの聞書を編集した『茶話指月集』に、次のような逸話があります。
豊臣秀長に仕えた茶人“桑山左近”が、利休へ茶の間への露地のしつらいについて尋ねたところ、千利休は、一首の句で伝えたと言われています。
「樫の葉の もみぢぬからに ちりつもる 奥山寺の 道のさびしさ」
それは、直接目に見える美しさではなく、その風情や風景のなかにこそ、物事の本当の美しさの境地があり、心の休まる場所があると伝えていたと言われています。
休日は、朝日が昇れば、木漏れ日の下で、お茶をのみながら大切な人と他愛ないことを話し。
仕事の日は、日の入り後に、今日1日を振り返りながら、一人静かにお茶を煎じる。
無理をせず、自然と共に生活していくことこそが、本当の贅沢時間なのかもしれない。
そこで、春暁(日の出直後)、春宵(日の入直後)に、そんな時間をお茶を通してお届けしたいと想いを込めて、”暁(Akatsuki)”と“宵(Yoi)”と名付けました。
◇◆”暁宵”で嗜む、玉露
休日の朝には夫婦二人で。仕事終わりには一日を振り返り、一人静かに楽しむ玉露時間に。
同じ玉露でも、その茶葉の性質ごとに飲みやすい容量があります。その容量は緻密です。
例えば、初めて自分で玉露を淹れる方にとってはハードルにもなる、美味しく玉露を飲むための茶葉の計量を、450年という長い歴史の上に培われた、合組(ブレンド)技術を元に老舗茶舗 上林春松本店がおこなっています。袋を開け、内包されている茶葉を全て急須に入れ、お湯を準備して注ぐだけで美味しい玉露を淹れることができます。
急須に茶葉を入れ、お湯を注いだ瞬間に心の奥からほっと落ち着く優しい芳醇のお茶の香りが辺り一面に漂います。
抽出されるお茶は透明な黄色の水色(すいしょく)。玉露のまろやかな甘みは、身体を芯から癒してくれます。このプロジェクトの暁宵の急須は、この旨味成分を余すことなく、凝縮された最後の一滴(芳醇の一滴)まで淹れることができます。
さらに、美味しいお茶を味わってもらえるよう、急須の茶漉しから茶葉がバランスよく流れ出るようになっています。
◇◆「玉の露」と呼ばれる芳醇の一滴、まろやかな甘みを持つお茶
独特のまろやかな甘みが特徴の玉露。その特徴の秘密は、手間がかかり、収穫量も少ない、特別な育成方法にあります。
煎茶のように日光を燦々と浴びて育てるのではなく、茶畑に覆いをして日光を遮断して育てます。これを覆下園(覆下栽培)と言います。新芽が開き始めた頃、20日間以上茶園に覆いをすることによって、柔らかく、濃い緑色の芽に育てます。それによりお茶の旨みが増し、まろやかな味わいになります。
玉露は、テアニンからカテキンへの変化が少なく、渋み成分であるタンニンを抑えることができるため、旨みが多いお茶となります。
また、新芽の先から3枚目までの葉を茎から折り摘みします。その手間隙かかる栽培方法から、様々なお茶の中でも高級、高品位なお茶として位置づけられています。
玉露の産地で知られる、京都宇治は、昼夜の寒暖差が大きい地域環境にあり、お茶の栽培に恵まれているため、高品質なお茶が生まれます。
◇◆伝統×工芸のコラボレーション
この常滑焼の急須と湯呑、玉露お茶セットをお届けするプロジェクトは、日本茶と陶芸、異なる2つの伝統文化と工芸技術を有する作り手のコラボレーションで実現しました。
---上林春松本店 第十五代当主 上林春松
第十五代上林春松氏が当主の、450年続く京都宇治の老舗茶舗“上林春松本店”が、玉露を初めて淹れて楽しみたい人たちに、もっと便利に気軽に、高品位な本物の宇治茶を美味しく飲んでもらえるように宇治玉露を一煎パックにしました。さらに、上林春松氏が急須の機能監修を手掛けました。
第十五代当主 上林春松氏 推薦コメント
---常滑焼伝統工芸士 都築豊
正統な常滑の作陶、ろくろ技術を伝承しながらも、京焼・清水焼の繊細な工芸美を融合。
現代のライフスタイルに合わせ技術を深化させ続ける、経済産業大臣認定常滑焼の伝統工芸士、都築豊氏が、高品位な宇治玉露を最後の一滴(芳醇の一滴)まで抽出し、女性でも片手で淹れ易いなどの機能美を持たせ、現代のインテリアにも馴染む形状デザインにまで無駄を削ぎ落し、徹底的に磨き上げた急須を開発しました。
◇◆デザインのこだわり
余分なデザインを極限まで取り除き、お茶の淹れやすさを追求。マットな土の風合いを生かしたインテリアにもなる美しい急須。存在感のある凛とした佇まいで、シェルフ棚などの見せる収納では、陰影のある美しく見栄えする空間が生まれます。
無釉仕上げの常滑焼のため、お茶の雑味を取り除くことができます。
また、広口で底面は平ら。中まで手が入るので洗いやすいです。
裏底面まで徹底的に作りあげています。
1つ1つ丁寧に磨きをかけることで、温もりのある陶土の質感と肌触りが完成しています。
急須本体に蓋をセットするとピッタリ収まります。蓋は傾けても上下左右にずれないため、急須の密封性が高くなり、お茶をより美味しく淹れることができます。
湯呑みの飲み口は自然な反りと、優しい陶土の質感です。
宵の湯呑みは、お茶の緑色が綺麗に目に映るよう白線の渦を描いています。※お茶の色をよりはっきり映しだすため、実際の製品では渦の直径が1-2cmほど広くなります。またひとつひとつ手描きのため、渦の形状に個体差があります。
◇◆機能のこだわり
蓋のつまみの大きさ、厚み、くぼみ。指が馴染むようにスっとはまり、持ちやすく淹れやすいです。
旨味成分が凝縮される最後の一滴が急須内に残らず、注ぎきることができる胴開けの茶漉し。
本来、湯呑に茶葉が流れ落ちてその味わいを楽しむことも玉露の醍醐味であるため、そのバランスを考慮した茶漉しの穴の形状に仕上げています。
玉露を淹れるための急須。
男性の手にはすっぽり収まり、手の小さな女性でも楽に掴みやすい大きさと丸みになっています。
◇◆製品仕様
宵、暁、全ての急須、湯呑みは、伝統工芸士”都築豊”氏の手仕事から生まれます。お届けする1つのご注文ごとに一つ一つ手作りをさせて頂きます。陶土の状態、気温、湿度、焼成環境、自然環境に大きく影響を受けながら生み出される工芸品のため2つと同じ個体が生まれません。サイズ感、重さ、厚み、色味に関して個体差がありますことをご了承ください。一期一会の伝統工芸品の味としてお楽しみ頂けましたら幸いです。
- 宵 Yoi -
急須
生産地:日本(常滑)
重さ:250g
容量:240ml
サイズ:直径9cm(注ぎ口含む幅12cm)×高さ(つまみ含む)7.5cm
湯呑み
生産地 :日本(常滑)
重さ :114g
容量:50ml
サイズ:直径5.9cm×高さ4cm
- 暁 Akatsuki -
急須
生産地:日本(常滑)
重さ:250g
容量:240ml
サイズ:直径9cm(注ぎ口含む幅12cm)×高さ(つまみ含む)7.5cm
湯呑み
生産地 :日本(常滑)
重さ :114g
容量:50ml
サイズ:直径5.9cm×高さ4cm
茶葉(暁setと宵set 共通)
上林春松本店合組(オリジナル)
京都宇治産玉露100% 8g (1煎用 湯呑2-3個分)
◇◆作り手プロフィール
---上林春松本店 第十五代 上林春松
京都府宇治市出身。上林春松家の長男として1966年に生まれる。幼少より作業場の職人やお茶に慣れ親しみながら育ち、現在は上林春松本店の代表を務める。21年9月には十五代目・上林春松を襲名。歴史に翻弄されながらも、その時代に合わせたお茶作りをしてきた上林春松家。
「温故知新」を社是とし、日本コカ・コーラ社の緑茶飲料「綾鷹」の開発協力や、スイーツなど様々な分野とのコラボレーションを行っています。
時代のニーズに沿う商品の提案を積極的に行いながら、緑茶文化を未来に伝えて参ります。
---上林春松本店
十三世紀初頭、栂尾高山寺の僧・明恵上人が宇治の五ヶ庄に茶種を播いたのが宇治茶(抹茶)の始まりと言われています。
宇治茶の名声が流布した十六世紀後半頃、上林家は有力茶師として栄えました。また、お茶を好んだ豊臣秀吉に重用され、江戸時代に入ると徳川家康から茶頭取として、宇治茶の総支配を命ぜられ、代官として御茶師全体の総括を担っていました。
明治維新後も、当時の新製品であった煎茶と玉露を扱い、多くの愛好者を得て、宇治の老舗茶舗として今日に到りました。
創業450年、お茶の歴史と共に十五代。上林春松家は「伝統と革新」という言葉と共に歩んでおります。
---大興寺窯 常滑焼伝統工芸士 都築豊
常滑焼の父 都築青峰の元、作陶を志し、「清水焼の郷」京都市山科の窯元で修行積んだ後、自ら大興寺窯を開窯。
日本を代表する六古窯のひとつ、常滑焼固有の恵まれた性質の陶土と、民藝としての機能美に、京焼・清水焼の繊細に美しく昇華させた芸術性を掛け合わせ、現代の新しい常滑焼の在り方を追求し続けている。
"数ひき"と呼ばれる"ろくろ"技術をはじめ、京焼・清水焼と常滑焼、産地の型を越えていく創造力が生み出す茶器の数々は、使い心地と共に、無駄のない凛とした美しさが特徴。
経済産業大臣認定 常滑焼、伝統工芸士。