熱戦を繰り広げていた東京2020大会は閉会しましたが、テレビや雑誌などでは、まだまだアスリートの皆さんの活躍が目覚ましいですね!
この間、某テレビ番組で、バドミントン混合ダブルスで銅メダルを獲得した“ワタガシペア”こと渡辺勇大さんが、パートナーの東野有紗さんの誕生日プレゼントに漆器のお椀をプレゼントされていたのですが。
御覧になりました?お二人の関係ってなんか素敵じゃないですか?
男性から女性へのプレゼントに、伝統工芸の漆器のお椀とは、結婚祝い以外であまり見かけたことがないので、ちょっと驚きました!
従来の漆器・お椀は、赤や黒の漆、和テイストの強いものを真っ先に思い浮かべる方も少なくないと思います。
ところが最近は、カラーバリエーションが豊富で、ナチュラルな温かい風合いで、コロンと丸く可愛い形状の物が少しずつ増えてきて、それらは、人気の北欧風インテリアや、白いシンプルな壁紙、木目のダイニングテーブル、食器棚に馴染みやすいのが特徴です。
最近では、自宅で"ごはん"を食べることがグッと増え、お味噌汁の出番も多いと思います。
是非、この機会に揃えて、ちょっと上質な土曜の朝ごはんを演出してみるのもいかもしれません。
そんなわけで今回、うつわマルシェ+plus eでは、『上質な土曜の朝ごはん』の演出におすすめの、『山中漆器 白鷺木工』をご紹介。
▼国産木だけを使い、正真正銘の真面目な日本製「メイドインジャパン」の日用食具
石川県にある山中温泉。
温泉街よりずっと山の奥の方に白鷺木工はあります。
椀、盆、丸膳など丸い形の日用食具、丸物木地と呼ばれる円形の木の器たち。白鷺木工は三世代に渡り伝統工芸品の山中漆器を中心に丸物木地をつくり続けています。
▼山中漆器と言えば、木地の木目が美しい「拭き漆」のお椀
400年前から始まった山中漆器は「拭き漆」という木目が透けるような美しい塗り方が特徴の漆器です。生漆(きうるし)とよばれる透けた漆を、塗っては拭き取る作業を4~5回繰り返し、漆を木地に刷り込んでいきます。漆が木地に染み込むので、塗った後も木目が見える仕上がりになります。
同じ漆の色でも、木の種類や木地の取り方によって、木目の表れ方は様々です。木目がはっきり出やすいもの、柔らかく出てくるもの、それぞれが魅力的な木の個性ですね。
拭き漆は木地が隠れないため、ごまかしがききません。木地挽物職人の技術が高い山中漆器は「木地の山中」と称されています。そんな山中漆器がどんな風に出来上がっていくのか、ご紹介します。
▼原木の買付けから器づくりまで一貫して仕上げる経験豊富な職人たち
挽物は木工のなかでは最も量産が可能な技法なため、木取り・粗挽き・仕上げ挽きを分業することが昔から業界の常識となっていますが、白鷺木工は原木の木取りから仕上げ挽きまでトータルで手がけています。1からすべて自分たちの手、目が入ることで、素材へのこだわりや繊細な仕上げなどに繋がっていくのですね。
1.原木買付
ろくろ技術の高い山中温泉には職人も多く在中しますが、原木の加工から携わる職人は希で、白鷺木工は数少ない原木仕入・加工を担っており、天然木から作られている山中漆器の原材料の5割をシェアしています。
月に2~3回、市場で原木を買い付け。同じ種類の木でも、1本1本硬さや年輪に違いがあり、どの原木を競り落とすかは長年の経験で養った目利きが必要となります。
2.原木が器になる第一歩の製材加工。
原木の製材加工です。山中漆器の特徴である木目がキレイに出る「縦木取り」は原木を輪切りにしていくことで作られます。
3.これも目利きの真骨頂!「けがき」
輪切りにされた気を製品の大きさに印をつけることを「けがき」と言います。外側・内側、年輪の幅などで性質が変わるため、どこにどの製品をとるかを決める、とても重要な作業です。
きっとベテランの職人さんには、この木の中の年輪の状態もわかっていらっしゃるのでしょう。表立って見えるものではありませんが、これも匠の技であることは間違いありません。
4.大まかにカットして、加工しやすく製材する
帯ノコでけがきの印にカットしていきます。
5.外側粗挽き
旋盤に木地を固定して、回転させながら器の外側を大まかな寸法に加工します。少しずつお椀の形が見えてきましたね。
6.内側粗挽き
今度は旋盤で器の内側を大まかな寸法に加工します。写真で伝わりにくいかもしれませんが、かなり早いスピードで回転しています。
7.ゆがみをなくすため、ゆっくりと乾燥させる
木に含まれている水分を乾燥させます。乾燥により含水率が低くなると木が収縮し変形します。収縮・変形させてから仕上形成することで商品になってからのゆがみがなくなります。短時間で乾燥させると木が割れてしまうため1~3ヶ月かけてゆっくり乾燥します。木の状態を常にチェックし温度と湿度を変えながら管理します。
(話が逸れますが、ヤナギが個人的に好きな画です。以前の
ブログ益子焼 つかもと窯でもありましたが、乾燥時に整然と並んだ素地の画像が、もはや芸術的なのです。これだけ高くバランスよく並べることも技術の一つだと思います。どこかのミュージアムにこういう壁があっても良いんじゃないかと思うほどに、心揺さぶられます。)
▼質の高い器を求められることによって、必然と高まった挽物の技術力
乾燥が完了した木地は、いよいよ仕上挽きに入ります。
薄いものや曲線のデザインは、ろくろ職人の腕の見せ所です。
8.まずは外側の仕上挽き
削りすぎたら元に戻せない緊張感。集中して慎重に作業を進めていきます。
9.今度は内側を中挽き
器の内側は、ろくろで仕上げる前に旋盤でほぼ完成の寸法まで加工します。
10.手技が光る、内側仕上挽き
ろくろに固定して、いよいよ仕上げです。見ている方は割れやしないかと冷や冷やしそうです。
▼道具も自分で作る。だからこそ出来る木地挽きの繊細な技。
木地挽きに使われる鉋(かんな)は器のデザインによって異なり、この鉋を挽物職人が自ら製作するというのは他に類を見ず、高く評価されています。
それだけ製品の仕上がりに対するこだわりが感じられますね。
11.漆塗り
山中漆器の特徴と言われる「拭き漆」。漆を塗っては拭き取る作業を4~5回 繰り返し、漆を木地に刷り込んでいきます。漆が木地に染み込むので塗った後も木目が見えるように仕上がります。
12.湿気を保って乾燥させるという、漆器独特の乾燥方法
漆は水分がないと乾かないため(硬化)、風呂棚とよばれる湿気のある棚で乾燥させます。普段の生活の中で「乾燥」と聞くと、「乾燥=湿気を取る」イメージがありますが、漆の場合はその湿気の水分から酸素を取り込み、化学反応で硬くなる=乾燥となるそうです。本当、不思議ですね。
そうして徐々に漆独特の優しい光沢が生まれてきます。
▼拭き漆で改めて見えてくる木取りのこだわりと、目利きの妙
ここまで原木を仕入れてから約3か月。長い時間と様々な職人の手を経て完成です。
こうして完成品を見てみると、最初の木取り、けがきの作業での目利きがこの木目に表れているんだなと、しみじみ感じます。木地挽きの技術もさることながら、あまり表には見えにくい職人技にも感慨です。
▼手作りと量産性のバランスを大事にする
「白鷺木工はひとつひとつに気持ちを込めてつくることを大切にしながらも、同時に斉一性量産化にも重点をおいています。それが上質な器を、使いたい人に届けるための適切なバランスだと考えています。
とりわけ日本人に深いなじみのある椀や盆などの丸物木器に携わっているからこそ、つくり手の想いは大切だと考えています。」
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子どもから大人まで長く愛用頂ける素敵な器を作られている白鷺木工。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ヤナギ